モーパッサンの脂肪の塊


モーパッサンの脂肪の塊という作品のあらすじと魅力についてご紹介したいと思います。

作中では、ルーアンからル・アーブルへ逃げるための馬車に乗り合わせた人たちとその馬車を通すまいとする関所の人間の駆け引きを描かれています。

貧しいもの、豊かなもの
太ったもの、痩せたもの
被害者と加害者、
利用するものとされるもの

が、1つの馬車に乗り合わせており、その中でも娼婦のブールド・シュイフがその対比を強調させる存在として際立っています。

この馬車には上流階級のものと、下流階級のものが乗り合わせていたけれど、食べ物を持っていたのはいわゆる下流階級と言われるような職種、娼婦であるブールド・シュイフでした。

けれど、みんなが飢えることに身分は関係ありません。

食べ物を持っている人間が一番力を持ち、食べ物を分け与えるブールド・シュイフが娼婦でありながら、馬車の中で力をもちます。

この場面では、最初娼婦として軽蔑していたブールド・シュイフに対する手のひら返しが、非常に印象的です。

その後、馬車は関所に通りがかるのですが、ブールド・シュイフは関所の役人に体を売らなければ関所は通らせないと言い寄られてしまいます。



結局、一旦は味方になってくれたものの、周りの後押しのせいで売春をすることになってしまいます。

買春をした後、ブールド・シュイフのお陰で関所を通れたのにもかかわらず、馬車の同乗者たちはまたも手のひら返しをして、ブールド・シュイフを無視するのです。

日本では痩せた女性が、もてはやされるため、ブールド・シュイフの魅力が伝わりにくいですが、特に食糧難になりがちな国では太った女性がもてはやされる傾向があると聞いたことがあります。

脂肪の塊の物語の背景となっている時代では、本能的に、好まれる体型だと思われます。

このような食料難の状況で、ここまで豊満な肉体をしているというのは、相当に良い暮らしをしていることも予想されます。

上流階級の人からすれば、軽蔑すべき娼婦がこのような良い暮らしをしていることは激しい嫉妬の対象となることが予想されます。

ブールド・シュイフに対する二度の手のひら返しのように激しい感情的反応をみせるのは、嫉妬と羨望が裏に隠れているのかもしれません。

極限に置かれた時の人間の酷薄な振る舞いが緻密に描かれた印象深い短編でした。


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