脂肪の塊を読んで


この物語は馬車に乗り合わせた人たちとその馬車を通すまいとする関所の人間の駆け引きを描いている。

貧しいもの、豊かなもの
太ったもの、痩せたもの
被害者と加害者、
利用するものとされるもの

などといったあらゆる対比が展開されている。

題名にもある”脂肪のかたまり”というのは、特にうえている時には、ある瞬間どうしようもなく魅力的な2つの事柄を象徴しているのかなと、思った。

1つ目は冒頭の馬車の中で、飢えた同乗者たちを魅了するかごいっぱいの食べ物。この馬車には上流階級のものと、下流階級のものが乗り合わせていたけれど、食べ物を持っていたのはいわゆる下流階級と言われるような職種の人間だった。けれど、みんなが飢えることに身分は関係ない。食べ物を持っている人間が一番魅力的な立場になることの表現、とりわけ飢えている人の表現が秀逸だった。

もう1つは、馬車に乗った人の1人でもあり、関所の責任者に目をつけられてしまったまるまると太っている娼婦の女性。結局、周りの後押しのせいで売春をすることになってしまう。日本では痩せた女性が、もてはやされる傾向があるけれど、国際的には、特に食糧難になりがちな国では太った女性がもてはやされる傾向があると聞いたことがある。この小説の時代背景もそういった設定だった。おそらくこういう場合、本能的に、好まれる体型なんだと思う。

かなり短い話だけど、極限に置かれた時の人間の振る舞いが緻密に描かれ、色んな対比があることで登場人物の個性が際立っている印象深い本だった。

 

 

 

 

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